はじめに
龍の起源は「蛇」が神格化したものと考えられています。
しかし、中国の龍は実は違うようです。
中国の龍は蛇が中心母体となってから発展したものではなく、
中国北方の遼河文明（興隆窪文化、査海文化、紅山文化など）で様々な動物が合体して神格化されていったものらしいです。
遼河文明の変遷と龍の形象化の変遷についてメモ的まとめ
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遼河文明と龍
紀元前6000～5000年 興隆窪文化 龍の起源は中国東北部
紀元前の古代中国文明では、北が畑作牧畜民、南が稲作漁労民が営んでいました。
龍の起源は、よく江南の長江領域に住む揚子江ワニが起源と考えられています。
しかし、どちらかというと、北の畑作牧畜地帯で、森と草原のはざまで誕生した可能性が高いようです。
現在の中国東北部の内モンゴル自治区から遼寧（りょうねい）省にかけての地域において、水田は大河川の下流のみにみられる程度で、ほとんどが畑作地帯になっています。
また、この地域では東日本の縄文土器と類似した土器が発見されています。
紀元前6000年頃の、興隆窪遺跡の墓地から、猪と埋葬された墓がみつかっています。
牛、鹿などと一緒に埋葬するのは、長江下流、チベットなどモンゴロイドが拡散した地域でも見られ、動物が神聖化されていたことを物語ります。
興隆窪遺跡の後にできた上山遺跡からは、土器に猪、鹿、鳥の頭をもった龍が描かれた土器が出土し、尻尾には鱗が描かれているものもあるようです。
こうした、森に生息する猪、鳥、鹿、そして川に住む魚を融合し架空の生き物ができていきます。
紀元前5000年頃 査海遺跡 最古の龍と最古の玉遺跡
考古発見から見る限り、竜のような姿は今から大よそ7000年前の査海文化遺跡から初めて現れます。査海遺跡は現在の遼寧省阜新蒙古族自治県査海村にあり、西遼河流域に属する台地から、長さ19.2ｍの石積みから龍の文様が発見されています。
査海遺跡の石龍
また、この墓地からは、玉でできた製品も発見され、「玉龍の故郷」と名付けられました。
この遺跡の玉製品は、日本でも見られ、紀元前5000年頃から日本と交流があったことがうかがえます。
長江文明で龍が出現するのは紀元前3000年頃で、遼河文明よりあとになります。
紀元前4000年頃 紅山文化 龍と馬との深い関係
紀元前4000年頃、中国東北部の内モンゴル自治区から遼寧（りょうねい）省にかけて紅山文化を代表する牛河梁（ぎゅうかりょう）遺跡からは、これまでに大型の五基の積石塚が発掘調査されています。
この塚から玉で作った龍が発見されました。
この龍は猪龍（ズーロン）と呼ばれ、猪をモデルにしたものです。
また、同じ紅山文化の別の遺跡翁牛特旗・三星他拉（さんせいたら）遺跡からは、馬のたてがみのようなものがみられます。
猪の形をした龍
馬の毛並みのある龍
坂本龍馬の龍馬とは何か。
梁代の孫柔之の「瑞応図」によると
「龍馬は河水中にすみ、高さ八尺五寸（3メートル弱）、首が長く。身体には鱗があり、体には翼がありる。また垂毛がはえ、鳴声は九音で水の上を走る」
と記されています。
紀元前4000 寒冷化と紅山文化の変遷
以上から、龍の原点は、中国東北部の森と平原のはざまで、そこに住む猪、鹿、鳥、馬、魚をモデルに紀元前6000年頃に興隆窪遺跡などで誕生し、紀元前5000年頃には現在の龍の原型に近いものが査海遺跡で出現、玉器とともに信仰が広まっていきました。
玉と龍への信仰が体系して、北方で完成したのが紀元前4000年頃の紅山文化の時代になってからで、牛河梁（ぎゅうかりょう）遺跡からは女神神殿、墓地、ピラミッド型の墳丘も発見されています。
女神神殿の中の墓地の人骨から龍の玉が発見されています。
この時代には女神信仰も広まっていたようです。
紀元前3000年になると、今度は寒冷化が顕著化して紅山文化は衰退し、紀元前2000年頃には完全に崩壊します。
反対に長江文明では紀元前3000年頃突如巨大都市良渚文化（りょうしょぶんか）が出現し、龍信仰が現れます。
この頃日本では、縄文中期にあたり、三内丸山遺跡のような巨大な木造建築物が出現します。
日本でもこれ以降、翡翠、蛇信仰、土偶信仰が顕著化していきます。
この背景には、紅山文化の担い手が、南方や日本列島へ移動してきた可能性も考えられます。
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